2020年代ロックはどのような方向へ向かうのか勝手に推察するため00年代を振り返る〜前編
グランジの祖と言えばセックス・ピストルズ、MC5、ブラック・フラッグ、ジーザス&メリーチェインなどパンクやハードコア系からの精神がメインではあったが、スマッシング・パンプキンズやウィーザー、レッド・クロスなどのポップ性は70年代の頃の
チープ・トリックの再評価
につながり、また、その精神性や佇まいは
ニール・ヤングの再評価
につながった。
このように90年代オルタナティブ/グランジの隆盛は、(失礼を承知で言えば)
過去の大物アーティスト
の再浮上に大きなひと役を買っている。その中で最も大きな成功をおさめたのは意外かも知れないがヘビー・メタル界の大御所
(オリジナル編成の)ブラック・サバスの再評価
だろう。当初この気運に対してボーカルだったオジーは、自分はバンドを抜けてソロになってからのキャリアの方が既に長く、ソロになってからの方がヒットを飛ばして来たのにという自負があったので両手をあげて大喜びとはいかなかったようだが、80年代ヘヴィ系アーティストが冷遇された時代において70年代サバスが再評価されていなければ、彼も、もしかしたら80年代の賜物とされていたかもしれない。事実当時のアイアン・メイデンやジューダス・プリーストが受けた状況を考えればそうなっていただろう。そう考えると彼は本当にラッキーだったと言えるし、逆に彼が主催したオズフェストによって00年代にもメタルの道は残されたと言える。
サバスに通ずるオルタナティブの特徴だった重低音は、正統派アメリカン・ハード・ロックと結びつき
を生み出す(厳密に言えばニッケルバックはカナダ出身なのだが)。また他方では、ラップ・メタルと結びつき、Nu Metalという名の下に一時代を築いていく。しかし、日本では、これらのヘヴィ系も受け入れられなかった。オジーをして
「メタルの未来」
と言わしめたディスターブドさえも従来のヘヴィ系のファンからは歓迎されなかったのだ。これはやはり新世代ヘヴィ系が80年代ロックを闇に葬ったオルタナを通過していたからだろう。ある意味これもカートの呪縛と言えるのかもしれない。そして、このジャンルを象徴するバンドと言えば何だかんだやっぱり
という事になるだろう。
80年代モトリー・クルーを聴くことが学校から禁止されたが、その後ボン・ジョヴィが現れ、そのアイドル的要素が大人も安心して子どもの耳にロックが届けるようになった。同様にこのNu Metalと呼ばれたこのジャンルも、スリップノットなどをはじめとしてサウンドも歌詞も過激であり決して大人たちから歓迎ばかりではなかった。しかし彼らの作品は(2ndアルバムまでだが)ペアレンタル・アドバイザリー(未成年に対して保護者の指導が必要な表現が含まれたもの)が付かない歌詞で登場し、この新たなロックを幅広いリスナーに安心して届ける事に成功し、このジャンルでは異例のアイドル的人気を誇った。
せっかく80年代ハード・ロック・バンドの名前が出て来たので、このまま触れて行こうと思う。90年代に隅に追いやられたハード・ロックでは99年にガンズの精神性を受け継いだかのようなサウンドの
バックチェリーがデビューしヒットを放つ。
そして2000年にデフ・レパードが「ユーフォリア」、ボン・ジョビが「クラッシュ」を、それぞれ迷走した時期もあったが「らしさ」を取り戻してヒットさせシーンへ復活の狼煙を上げた。その後、オルタナティブの登場は70年代音楽のレッド・ツェッペリンやAC/DCのようなクラシカルなハード・ロックの再評価にもつながり、更に後編でも触れるが00年代に起こったガレージ・ロックとも結びつきザ・ダットサンズやジ・アンサーといったバンドが登場。一方でザ・ダークネスやアンドリューWKの登場で無条件で楽しませるパーティ・ロックが悪いものではないと素直に言える状況になり下火だったこの市場に活気が戻ってきた所にジャック・ブラック主演の
映画「スクール・オブ・ロック」
が大ヒット‼️これによって遂に長い間グランジによって貼りつけられた「ハードロック=悪」というレッテルは剥がれ落ちたのだ。
因みに、このジャンルを隅に追いやったニルヴァーナの元ドラマーで
フー・ファイターズのデイヴ・グロールも実は持っていたメタル愛を炸裂させたのもこの時期だ。
これにより90年代に音楽的迷走をしてきた80年代のアーティスト達が本来の自分達の姿を取り戻し作品を作っていく。そしてNu Metalに身を置く若いバンドもまた80年代メタルに対し敬意を表した為
アイアン・メイデンやジューダ・スプリースト
などもまたレジェンドとしてこれまで以上にシーンの重鎮として君臨するようになった。
流石に、この辺になるともう音楽の細分化が激しくて一回では終わらないようだ…。後編へ続く。
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